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<産婦人科の基礎知識/不妊症や妊娠のお勉強

避妊

ここでは、避妊法について解説します。主にピルによる方法の解説が中心となります。

いろいろな避妊法

沢山の避妊法があり、それぞれメリットとデメリットがあります。
避妊効果という点から分けてみました。

避妊効果が高いもの

ピル(経口避妊薬)
IUD(子宮内避妊具)
不妊手術(パイプカット、卵管結紮術)

避妊効果が中くらいのもの

コンドーム
女性用コンドーム
ペッサリー

避妊効果が低いもの

荻野式(オギノ式)
膣内避妊薬(殺精子剤の挿入)

避妊効果がないもの(これは避妊ではありません・・・)

膣外射精
数回射精した後の膣内射精

パール指数とは

パール指数という考え方があります。
「1年間にそれぞれの避妊方法を行った100人の女性のうち何人が妊娠するか(避妊を失敗する)」をパーセントで表します。 パール指数が5である避妊法は1年間で100人の女性のうち5人が妊娠するという意味になります。 パール指数が少なければ少ないほど避妊効果があるということです。

避妊をまったくしない場合の(子どもを希望するとき)パール指数は85%です。(100%じゃないんですね) 飲み忘れなどがなければ、ピルはほぼ確実に避妊することができます。きちんと内服してパール指数は0.1%といわれます。 不妊手術では(パイプカットや卵管結紮術)0.1〜0.5%、IUDで0.1〜1%くらいといわれてます。 非常に効果が高いことがわかります。

コンドームは正しく使用すればパール指数は3%ですが、途中でつけたり、膣内ではずれたり破けたりすることもあるのでその場合はパール指数は15%くらいになってしまいます。 荻野式は厳密に行えば5%くらいも可能ですが、一般的には25%くらいになってしまいます。 殺精子剤も同じような感じですが、これはコンドームを併用することで効果は格段にアップします。 (もちろんコンドームを正しく使用したとき)

日本の現状

日本は避妊といえばコンドームが圧倒的に多く(ダントツです)、世界的にも珍しい方に入ります。 海外でのピルの使用は格段に多く、服用率は20%〜60%もあり、日本は1%以下と言われています。 エイズやクラミジアなどの性行為感染症に対する予防という観点からは、コンドームは理想的です。 しかし、避妊失敗率は高いので、その分望まない妊娠が海外にくらべると非常に多いという事実もあります。

残念ながら、日本は人工妊娠中絶術の頻度も非常に多い国に入ります。 海外では宗教上の理由から人工妊娠中絶が公に行えないという国もありますが、ピルを使用したりと避妊の考え方はしっかりしているようです。 日本では避妊に対する考え方が非常に甘いといえます。 特に若いカップルでは妊娠するつもりはないのに、避妊はほとんどしていない(膣外射精やコンドームの途中からの使用など) という矛盾があります。 どうやら「簡単には妊娠しないんじゃない」という間違った認識があるようですね。 当然ですが、タイミングさえ合えば一回の性交渉でも妊娠は成立します。

日本も、性に対してはかなりオープンになってきましたが、必要な性教育や避妊に対する知識の提供がきちんと行われていないことも問題といえますね。

避妊法の選び方

避妊法は沢山あり、その原理や使用方法も様々です。 避妊効果の高い避妊法である不妊手術、ピル、IUDの選択のアドバイスです。

不妊手術はほぼ永久的に妊娠することができなくなるので、すでに子どもを数人もうけてこれ以上の子どもを希望しない方にとっては良い方法となりますが、未婚の女性では現実的ではありません。

日本ではあまり選択されませんが、IUDはかなり理想的な避妊方法となります。 これは子宮内にプラスチックでできた小さな専用器具を挿入することで避妊効果を得る方法です。 挿入するときにすこし痛みを伴いますが、1分くらいで終わりその後は基本的に何もせずに避妊効果が得られます。 不正出血や感染などの心配はありますが、頻度は低く、あっても改善も早いことが多いです。 産後の授乳中でピルが飲めないが効果の高い避妊法が希望という方には最適です。 もちろん、未婚の女性でも可能です。

ピルは副効用といって、ピルを内服することで体にとっては良いこともいくつかあります。 また、避妊効果も高く、内服をやめればすぐにでも妊娠を希望することができる、といったメリットがありますが、毎日内服を規則正しく行わなければならない、副作用が気になる、ピルを飲めない合併症をもっているなどは気になるところです。 未婚の女性、既婚の女性でもすぐに子どもを希望しない方、女性の意志で避妊を希望する方などにはよい方法となります。

「ピル」とはどんなもの?

「ピル」=「避妊薬」という概念が浸透していますが、「pill(ピル)」とはもともと「薬」の意味ですね。 「飲み薬の避妊薬」のことを正確には「経口避妊薬」といいます。 でも、一般にはよく使われてますのでここでも「ピル」という言葉でいきます。

ピルは一種のホルモン剤で、ホルモン量のより少ないタイプの薬剤が数年前から日本でも認可され、処方できるようになりました。(低用量経口避妊薬、低用量ピルといわれるのはそのためです) 低用量となったことで、避妊効果は維持したまま、副作用が軽減されました。

ピルを飲むことでどうして避妊できるのでしょうか?
簡単に表現すると、「ピルは毎月の排卵を強制的に止めてしまう」ためです。 ピルを内服することで脳の下垂体というところから放出されるホルモンを少なくすることができます。 このホルモンが減少すると、卵巣に命令が届かず、卵子の含まれている卵胞というものが発育せず、結果的に排卵が抑制されてしまいます。 ピルを飲んでいる間は卵巣が排卵という活動を休止している状態なんですね。 休止している状態なのでピルをやめれば、排卵が始まり妊娠が可能となります。 その他、子宮の入口の粘液(子宮頚管粘液)や子宮の内側の膜(子宮内膜)にもピルが作用して避妊効果を発揮するといわれています。 卵子と精子の両者が出会って初めて受精し妊娠が成立するわけで、卵子がなければ妊娠することができません。
ピルの避妊効果が高いのはそんな訳なんですね。

このような仕組みなので、ピルを一錠飲んでもその効果はすぐには得られません。 つまり、コンドームの時のように、思い立ったらすぐに避妊をすることはできないのです。 飲み始めは、最低7日間は連続して内服をしないと排卵を抑制できません。 その後は、内服さえきちんとしていれば、いつでも避妊ができている状態となります。

現在低用量ピルは数社から発売されています。 発売されていると言っても普通の薬局でだれでも簡単に購入できるものではありません。 内服による注意点もあるので、医師の処方箋がないと手に入れることはできません。

ピルを内服すると、排卵は抑制されますが、生理のような出血は毎月ちゃんとあります。 いわゆる「生理」「月経」とはちがって「消退出血」という出血です。 出血の期間は7日以内であることがほとんどです。 ピルを内服しなかったときより生理が軽くなる方が多いです。(生理痛など)

ピルの使用方法

ピルに含まれる薬剤も製造会社により若干の違いがありますが、原理的には非常によく似てます。 現在一般的に処方されるピルは、1シートに含まれる錠剤の数が28個の「28日型」のものと21個の錠剤が含まれる「21日型」のものに分けられます。

また、服用開始の違いから、月経第1日目から服用を開始する「Day1スタートピル」と月経開始後の最初の日曜日から開始する「Sundayスタートピル」に分けられます。 後者は月経が週末に重ならないという利点があります。

ピルは毎日ほぼ決まった時間に内服をしている限り避妊効果があります。
飲み忘れは避妊効果の低下と不正性器出血を起こす可能性があるので注意が必要です。

21日型のピルの場合は21日分の錠剤をを飲み終えてから7日間(1週間)は休薬期間といって内服を行わない期間が存在します。この休薬期間に月経があります。 1週間の休薬期間が終了して、次のシートのピルを開始します。 4週間という一区切りの期間のうち1週間は内服をしなくて良いという利点がありますが、次のシートの飲み始めるのを忘れてしまうというデメリットもあります。

一方28日型は飲み始めを忘れるというデメリットがありません。 避妊を続けたい限り毎日1錠ずつ内服を続ければ良いからです。 28日型のピルの最後の1週間分は実は「偽薬」といって薬剤の成分が含まれていませんので、偽薬の期間に月経があることになります。 飲み忘れを少なくするという意味では28日型の方がメリットはあると思います。

ピルのメリット

ピルのメリットはなんと言ってもその高い避妊効果です。
ピルにはメインの効果以外に、その他のメリット(これを副効果といいます)もあります。

・生理周期の安定
・生理痛の軽減
・生理の時の出血量の減少
・ニキビの改善
・卵巣癌、子宮体癌の発症の減少
・子宮内膜症の改善 
などなど・・・

解説を加えます。
内服を続けることでほぼ4週間毎に生理を起こすことができるようになります。 これまで、生理不順のあった方は生理開始の時期がはっきりして、計画性が出てきます。

生理痛や子宮内膜症の症状が軽くなる方も多く、避妊目的ではなく、そのためにピルを内服している方も多いですね。 生理痛がひどくて病院を受診される方には私たちの方からピルを飲んでみますか?とおすすめすることもよくあります。

生理の出血量も減ることが多く、結果的に貧血の改善にもなります。
排卵を休止させるので卵巣癌の減少などもあります。

このようなメリットがあり、たばこを吸わない健康な女性が避妊を希望して内服する場合はメリットがデメリットを上回るといわれているくらいです。

ピルのデメリット

いいことばかりのようなピルですが、薬なのでもちろん、副作用が存在します。 ただ、「ホルモン剤は体に悪い」「すぐに太るらしい」「依存症になる」など間違った情報が多いのも事実です。

一般的な副作用として、気分不良、嘔吐、頭痛、不正性器出血などがありますが、内服を中断せざるを得ないほど症状が重い方は少なく、内服を続けてると体が順応して症状が軽くなるようです。

また、まれな疾患ですが、リスクが増えるといわれているものに以下のものがあります。
(代表的なものだけを掲載)

・静脈血栓塞栓症(VTE)の増加
・子宮頸癌の増加
・乳癌の増加  などなど・・・

子宮頸癌および乳癌の増加はあってもごくわずかといわれています。

静脈血栓塞栓症は「血液の固まりが血管の中でできて、それが細い血管に詰まり症状を起こす病気」です。 発生すると非常に重篤な症状を引き起こしますが、その発生頻度はもともと非常に少ないまれな病気です。 女性10万人あたり5人くらいの発生頻度です。 低用量ピルを内服することでVTEのリスクが3倍から5倍になるといわれており、それだけ聞くと「5倍にもなるの!」と驚かれますが、5倍になっても10万人あたり25人の発生頻度です。やはり珍しい病気です。

一般的に健康な女性がふつうの妊娠するとこの血栓ができやすい状況になります。 (お産の時にかなり出血するので早く血液を固まらせるためにとてもよいことなんです) 妊娠するだけでVTEのリスクが一般女性の12倍になるともいわれています。(10万人あたり60人) VTEのリスクに関していえば「ピルを内服するより、妊娠してしまうことの方がリスクが高くなる」ということです。

また、ある種の病気や状態の人は(たとえば、35才以上のヘビースモーカー)ピルを処方しないほうが良い場合もあります。 そのため、ピルの内服に当たっては産婦人科医の診察や問診が必要になるわけです。

緊急避妊法(モーニングアフターピルの内服)について

緊急避妊法とは、性交後に緊急避難的に使用される避妊法です。
望まない妊娠が成立し、妊娠中絶手術という苦渋の選択をした女性の体の負担を考えると、妊娠成立前に避妊する「緊急避妊法」は必要な知識です。あくまで「緊急避難的」に使用される方法であり、通常の避妊としては使用できませんのでご注意を。

どのような時に使用するの?

コンドームが途中で破れた、膣内で外れた、ピルを飲み忘れていたなどの避妊に失敗した場合、もしくはレイプ被害のとき。


その方法は?

もっとも普及している方法は「中用量ピルを内服する方法」です。 避妊が行われなかった性交後72時間以内できるだけ速やかに、中用量ピル(ドオルトンもしくはプラノバール)を2錠内服、その12時間後にさらに2錠内服します。(合計4錠、早ければ早いほど効果が高い) ドオルトンやプラノバールは旅行や結婚式などのために生理を遅らせるときなどにも使用されています。


その効果は?

この方法でちゃんと内服できれば、失敗は数%といわれ、かなり避妊効果は高いです。 早い方で数日後、一般的には内服後21日以内(3週間以内)にほとんどの方が生理と同じような出血があります。 この出血があれば、避妊は成功したことになります。 効果が不安な場合は、性交後3週間以上経って市販の妊娠検査薬で検査をしてみてください。 ただし、出血量が少なかったり、3週間しても出血がない場合は妊娠しているかもしれません。 この場合はかならず、妊娠検査をしてください。


副作用は?

4錠を一日以内に内服するので、かなりの頻度で吐き気や嘔吐があります。 そのほか乳房の痛みや頭痛などが出ることもあります。 内服できない状況もありますので、処方の際、産婦人科医と相談をしてください。


費用は?

もちろん保険は効かないので自費診療となります。 ピル4錠の処方で1000円くらいのところから数万円のところまでいろいろあるようです。


どこで入手できる?

産婦人科を受診して処方されます。 ただ、病院によってはこの方法での処方自体を行っていないところもあるので事前に確認が必要です。


72時間以上経っていたらどうするの?

最終手段として「IUD(子宮内避妊具)を挿入する方法」があります。 ただし、ピル内服の方法に比べると効果が劣る場合があり、緊急避妊を希望するのであれば、できるだけ早く産婦人科を受診してください。





 

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