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帝王切開術の具体的な方法(手術シミュレーション)

帝切の流れは、麻酔→消毒→腹壁切開→子宮切開→胎児娩出→胎盤娩出→子宮筋の縫合→腹壁縫合となります。
おなかを開いているのを想像しながら読んでください。

麻酔

一般的には、胃のあたりから下の部分を麻酔する脊椎麻酔が行われます。
おなかは痛くないけれど意識はあるといった状態を作り出します。背中から細い針を使って専用の麻酔薬を注入します。意識がある方が術後の回復も早く、また最も大切な出生直後の母児対面を行うことができますからね。脊椎麻酔は麻酔薬の直接的な影響が胎児に及ばない利点もあります。
緊急状態の時はやむを得ず全身麻酔をかけます。全身麻酔は母体の意識がなくなりますが、胎児も眠ってしまうことがあります。
硬膜外麻酔という麻酔を脊椎麻酔と併用することもあります。硬膜外麻酔の際に留置したカテーテルによって術後の疼痛管理も可能です。

消毒

脊椎麻酔がかかり手術台の上に仰向けに寝ていると、仰臥位低血圧症候群という急激な血圧低下が高率に発生するのでベッドを少し左に傾けるか、妊婦さんのお尻の右下にタオルを敷いたりして予防に心がけます。術者と助手は医療用のイソジンなどで両肘から先を何度も消毒し洗います。術者らは清潔なガウンを着て、妊婦さんのおなかの消毒などの準備がすむといよいよ手術開始です。

腹壁切開

メスで数ミリの厚さの皮膚を切るとその下には柔らかな皮下組織(脂肪組織ですね)があります。この皮下脂肪の厚さは非常に個人差があります。1センチ以内の人からハサミが埋まってしまうくらい厚い人まで・・・。皮下脂肪の下には腹直筋を包んでいる非常に丈夫な筋膜とよばれる膜があります。この膜を切ると真っ赤な腹直筋が見えてきます。腹直筋はおなかのど真ん中を2本平行して存在しており、2本の腹直筋の間を分けてはいると非常に薄い膜である腹膜が見えます。この膜を切ってやっとおなかの中の空間に入れます。

子宮切開

腹膜を開けると胎児を宿した大きな子宮の表面(前面)がどーんと見えます。
胎児を出すために子宮を切りますが、ほとんどの場合子宮は横に切ります。これを子宮下部横切開と呼んでいます。子宮はなすびや徳利をひっくり返した様な形をしていますが、子宮の筋層を横に切るというのは、なすびや徳利で例えると細くなった部分あたりを切ることになります。結構下の方です。このあたりが薄くて出血も少なく、傷も治りやすいのでね。

子宮の筋肉(子宮筋層)を切る前に、子宮の表面には漿膜といって子宮を包んでいる薄い膜がありますのでこれをまずハサミでちょきちょきと横に切り、その膜を子宮からある程度剥がして子宮筋層を切開して行きます。漿膜をはがす時は子宮の目の前にある膀胱を子宮から一部はがして下に押し下げてあげないといけません。そのままだと膀胱に傷が付いてしまうかもしれないからです。

筋層をメスでずばっと切るとその下にいるかわいいあかちゃんのお顔に傷を付けてしまうといけないので筋層を数ミリずつ(筋層は一般に5ミリ〜10ミリくらいの厚さがあります)慎重に切っていきます。子宮筋層を突破して羊水の入った袋(卵膜)が見えてくるとその中の胎児の頭、顔、髪の毛などが卵膜を通して透けて見えてきます。子宮の筋層がこの時点でまた2センチくらいの幅しか切っていないのでさらに両サイドへ数センチずつ切開創を広げます。

胎児の娩出

さあ、こまでくればいよいよです。
卵膜をピンセットでつまんで破り(非常に薄い膜です)羊水を流出させます、子宮の中へ術者の手をがばっと入れて、胎児の頭(骨盤位ならおしりとか足)をつかんで子宮のそとへだし、子宮の底部(母体の胃のあたり)を押すと胎児がぷりっとでてきます。

両手で胎児を抱えて誕生!となります。

と、ここまで(皮膚を切開して赤ちゃんが出てくるまで)一般的に5分以内くらいです。前回帝切などで癒着がひどいときはもっと時間がかかってしまいます。
お顔を拭いて、臍帯を切断し担当の助産師さんへ渡します。出生時の決まった処置を施して、赤ちゃんとお母さんの感動の対面となります。

胎盤の娩出

胎児が出た後の子宮は大量に出血が始まってますのでのんびりしていられません。まず胎盤を取り出して子宮の収縮を促します。(子宮収縮剤で収縮させることも多いです)。子宮の中の卵膜の残りなどをきれいに掃除して、子宮筋層の切開創から出血が多いときには専用の器具で挟んで一時的な止血を行います。そうしないと子宮からの出血はあっという間に数百mlになりますからね。

子宮筋層の縫合

子宮筋層は縫うことで止血されるので急いで子宮筋層を縫ってゆきます。
このときは抜糸の必要がない自然吸収される糸を使って縫っていくのが一般的です(吸収されるとっても数ヶ月がかかります)。70センチくらいのながーい糸で連続縫合で縫っていきます。私たちは筋層は1層縫合した後、もう一層縫合して(2層縫合)いますが、一層縫合でも術後の効果は変わらないという報告も多く、最近では欧米では1層縫合が多いようです。

子宮切開創からの出血が確実に止まっていることを確認して、おなかの中のチェック(子宮や卵巣や卵管に異常がないかどうかなど)し、ガーゼや手術道具の数がちゃんと合っているかどうかを確認しておなかを閉じます。

「なぜおなかの中にハサミなどを残す可能性があるの?」と思われる方も多いですね。
帝切はとくに急いでやる手術なので沢山の器具をじゃんじゃん出して、使っていきます。赤ちゃんや大量の出血に気をとられて小さなハサミやピンセットがおなかの中に紛れ込むなんてことが無いとは言えないのです。だからまずは入り込まないように注意することと、おなかを締める前に元々あったガーゼや機材の数をちゃんと確認する必要があるわけです(ガーゼは何十枚も使用しますが、しっかりとカウントされます)。ガーゼにはエックス線に反応する細い線維が入っており、術後にルーチンでエックス線撮影を行うところも多いです。ガーゼなどの遺残があれば細い線維がくっきりと記録されます。

腹壁縫合

いよいよ終わりです。
腹壁を切った逆の順番で閉じてゆきます。基本的には腹膜、筋膜、皮下脂肪、皮膚の4層をしっかりと縫合してゆきます。使用する糸や皮膚の縫合の仕方は非常にバリエーションがあります。皮膚の表面は医療用のホチキスのみだったり、ナイロン糸も併用したり色々です。一番内側の腹膜は縫合しない場合もあります。 腹壁の縫合が終わり、内診の要領で膣の中の悪露の量を確認して、ひどい出血が無ければ終了です。

皮膚切開のこと

最初のところで、おなかを切る(腹壁切開)と書きましたが、30センチもがばっと開くわけではありません。基本的には臍から下の切開で赤ちゃんを誕生させます。胎児の頭が通過すれば良いので傷の長さは大人の拳の横幅よりも少し広いくらいです。皮膚の切開は正面からおなかを見て縦に切る縦切開と切腹の時のように横に切る横切開があります。 一般的には縦切開が行われます。利点として、開腹する時間が短い、切開創を大きく広げる必要が出てきた時にいつでも切開創を延長できる、次の帝王切開時に癒着が少ないなどがあります。

横切開は最大の利点は美容的に傷が目立ちにくいことですね。ビキニを着ても傷が見えないことが多いです。また傷が横なので痛みも少ないようです。
非常に肥満の方は傷の治りの面から横切開が選択されることもあります。脂肪が多すぎて縦切開だと傷の治りが悪く、時間がかかることもあるからです。
横切開は皮下組織や筋膜の癒着がひどくなる傾向があり、デメリットとして次回の帝王切開の時に赤ちゃんがでるまでに非常に時間がかかることがあげられます。初回の帝切でも緊急の時はもちろん縦切開が選択されます。縦切開が圧倒的に早く赤ちゃんを出すことができますからね




 

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