胎児推定体重
超音波検査が発達する以前は、子宮内での胎児の発育を母体のおなかの大きさ、子宮底長という非常にアバウトな方法で推測するしかありませんでした。
今では超音波検査でいろいろなことがわかります。特に胎児の体重を推定することは超音波検査の重要な仕事の一つです。
推定体重を測定するためのパラメーター
推定体重を測定するためのパラメーターとして以下のものがあります。
児頭大横径(biparietal diameter ; BPD)
胎児の頭蓋骨の横幅です。
断面積ならどこでもよいというわけではありません。
基準となるラインが厳密に設定されています。
斜めの断面だと本来よりも大きな数値となってしまいます。
大腿骨長(fetal femur length ; FL)
太股の骨の長さですね。
人間の骨の中ではもっとも長い骨になります。
BPDとFLは胎児の向きや圧迫などでほとんど変化をしません。
パラメーターとしては最適です。
腹囲や胎児躯幹横断面積
腹囲(abdominal circumference ; AC)や胎児躯幹横断面積(fetal trunk area ; FTA)などは胎児の腹部の大きさを測定するものになります。
胎児の腹部は柔らかいので圧迫や胎児の向きによりその断面はいつも完全な円形をしているわけではなく、また測定の際に誤差も生じやすく変動しやすいパラメーターになります。
腹部のバラメーターはなにを採用するのかにより算出の仕方がいくつか存在します。
これらのパラメーターを超音波検査で測定し、入力すると超音波検査の中のコンピューターが複雑な計算式に代入し推定体重を算出してくれます。
そうして算出された数値が胎児推定体重(estimated fetal body weight ; EFBW)となります。
コンピューターに組み込まれている計算式は、胎児をある一定の密度を持った円柱形の立体と仮定して考案されたものです。
超音波検査の誤差について
推定体重を計算するパラメーターの測定の方法は非常に厳密に決められています。
それらをいかに正確に超音波検査で描出し、測定するかで推定体重の精度が決まってきます。
しかしながら、実際に胎児の重さを測定しているわけではないので、実際の胎児の体重との間に誤差が生じます。
だいたい1割程度の誤差となります。
妊娠末期になると3000グラムくらいの体重になるので前後300グラムくらいの誤差が生じる可能性があります。
仮に二人の胎児がいて、手の長さや膝から下の足の長さ、肩幅、お尻の脂肪や筋肉の付き方などに違いがあっても先述したパラメーターが全く同じ数値であれば、推定体重は同じものになります。
実際の体重には差があっても、です。
また、妊娠末期は多いと一週間で200グラムから300グラムくらい胎児の体重が増加するので、最後の妊婦健診が分娩の1週間前であれば、よりいっそう誤差が広がったように感じます。
厳密な妊娠週数が大切
胎児の発育を評価するため必要な他のパラメーターが正確な妊娠週数です。
妊娠週数が正確ではなく実際の週数から2週間ほどずれていると胎児が正常に発育していても「小さめの赤ちゃん」という評価になってしましますね。
一般的には最終月経の開始日を妊娠0週0日として280日を足した日を分娩予定日としています。
(排卵日が正確にわかっていれば、その日を妊娠2週0日として計算します)
これは、月経周期が28日型で順調に来ている人の場合で、月経周期が35日などの場合、排卵日が毎回定まらない場合、いつも順調の排卵がたまたま遅れた場合など、最終月経から計算すると見かけ上「小さな赤ちゃん」となってしまうことがあります。
出生体重は同じ週数でも2500グラムの赤ちゃんも3500グラムの赤ちゃんも、妊娠10週くらいまでの妊娠初期では、胎児の体長(胎児の座高に相当)はあまり個人差はありません。
つまり、体長を測定することで受精してどのくらいの期間経過しているかが逆算できるわけです。
妊娠初期の体長がどのくらいの週数に当たるかはだいたい決まっており、最終月経から計算した週数が大きくずれている可能性があるときは胎児の体長から分娩予定日をちゃんと補正しておかなくてはなりません。
正確な推定体重を評価する「ものさし」として正確な妊娠週数が必要だからです。
胎児の発育の評価は注意が必要
沢山のデータを集めて胎児の推定体重の推移を表したグラフが作られています。
この週数ならこの位が平均値で、ある数値を下回ると発育が不良であるという感じで評価できるようになります。
一般的に沢山のデータを測定するとばらつきを持ったデータが集まります。
たとえば妊娠30週あたりの胎児の推定体重はだいたい平均1500グラムですが、1200グラムくらいの胎児もいれば、1800グラムくらいの胎児もいるわけです。
同じ週数でも平均値よりも小さいから即、異常であるとは判断しません。
正常な発育の基準となる推定体重にはある程度幅がありますので、その正常の幅を超えてさらに小さい時にはじめて「発育が不良である」と判断します。
胎児の発育が過剰な場合よりも、発育が不良である場合の方がいろいろと問題となることは多いものです。
次のページからは胎児の発育の異常について解説します。


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