分娩の進行に重要な要素が3つあります。
1.娩出力
2.産道
3.胎児および付属物
これらを分娩の3要素といいます。
これらが複雑に絡み合って分娩がスムースに終わるのかどうかが決まります。
胎児を押し出す力のことです。
子宮の規則的で自律的な収縮である陣痛と母体の意識的な力である怒責力などがあります。
陣痛は時期が来ると自然に発生する子宮の収縮のことです。
子宮は筋肉でできた袋であり胎児を娩出する際の重要な力の源になります。
いくらいきんでも(ふんばっても)陣痛がなければ赤ちゃんは生まれません。
陣痛が頻繁に発来して、しっかりとした娩出力があって胎児は娩出されます。
陣痛は最初は一時間に数回ですが、最終的には2〜3分に一回の割合で発来するようになります。
また持続時間も十分にあると1分くらい続きます。
娩出力の異常で難産となる代表は陣痛が弱い微弱陣痛という状態ですね。
娩出力が弱く、分娩がスムースに進行しない場合は、子宮収縮剤を使用し娩出力を増強させ分娩を進行させます。
基本的にはしっかりとした陣痛があればそれだけで赤ちゃんは生まれますが、一般的には陣痛にあわせて怒責をかけて娩出力を補助します。
怒責はいきみとかふんばりのことで、呼吸を止めて腹圧を上げる動作です。
(排便の時にふんばることと同じです)
産道は胎児の通過してくる通路で胎児の娩出力に対しては抵抗として作用します。
つまり、産道の抵抗力は少なければ少ないほどスムースな分娩となります。
産道は広ければ広いほど、また軟らかければ軟らかいほど良いということになります。
産道を形成するのは子宮頚部や膣、外陰部などの軟らかい軟産道だけでなく、それを支えている骨盤骨(骨産道)も重要です。
骨盤骨は底が抜けたお椀のような感じの骨で、底が抜けた部分(穴)を胎児が通過するので絶対的に小さな骨盤だとスムースに分娩が進行しません。
骨盤骨の大きさは身長に比例するところがあり低身長の場合(150センチ以下)は難産の可能性がでてきます。
交通事故などで骨盤骨の骨折があり大きく変形している場合などは骨産道に原因がある難産となる可能性があります。
軟産道が硬くてのびが悪く、難産となることを軟産道強靭症と呼んでいます。
高齢初産の方の分娩が難産傾向となる理由の1つにこれがあります。
分娩の痛みやそれに対する恐怖は軟産道の抵抗を上昇させてしまいます。
ラマーズ法やソフロロジー法などの分娩方法は精神的なトレーニングにより、痛みや恐怖を取り除き出産を行います。
これらの出産方法は無理ないきみをできるだけ行わずに、自然な陣痛のみを娩出力として、産道をできるだけリラックスさせて行う出産ですね。
胎児と付属物である臍帯や胎盤も分娩の重要な要素になります。
理論的には産道を通過する胎児は小さければ小さいほど抵抗は減り、スムースな分娩となりますね。
しかし、新生児は適正な大きさが必要なので小さければよいという訳ではありません。
逆にかなり大きな赤ちゃんでも産道に余裕があれば問題なし、となります。
つまり産道と胎児は相対的な関係にあります。
相対的に胎児の大きさ(特に頭の大きさ)が母体の骨盤の大きさよりも大きい場合は児頭骨盤不均衡という状態になり難産や経膣分娩が不可能となることもあります。
胎児の大きさが母体の産道を十分に通過できると判断されても、分娩がスムースに進行しないこともあります。
産道はまっすぐなトンネルではなく、複雑な形のトンネルです。
ここを通過するために胎児は何度も頭の向きを変えながら通過してきます(これを児頭の回旋といいます)。
この回旋が適切に行われないと回旋異常による難産となります。
骨盤位(さかご)は胎児の向きの異常による異常分娩であり、前置胎盤などは付属物の異常による異常分娩です。