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流産手術
ここでは流産の手術に関して具体的に解説します。
いわゆる人工妊娠中絶も方法は「流産手術」と同じです。
流産手術の目的
完全流産は絨毛組織が自然に完全に排出された状態で、hCGも急速に減少して月経、排卵が再開されます。そのため完全流産では流産手術は必要ありません。
不全流産や稽留流産は大部分は排出されているか、もしくは、胎児の心拍は停止している状態です。
絨毛組織(母体と胎児の物質の交換の場となる部分です)が残っているとhCGというホルモンの分泌が持続するため次の排卵、妊娠ができません。
(この場合妊娠反応をしても”陽性”という結果になります)
絨毛組織を完全に取りのぞき、排卵再開を促し、次の妊娠に備えることが流産手術の目的になります。
流産手術のながれ
「流産手術」は「子宮頚部の拡張と子宮内容掻爬」(D & C)といわれます。 手術器具を子宮内まで挿入するために子宮の入り口を開く必要があり、その後子宮の中に残存している組織を(絨毛成分、胎児成分)を掻きだし摘出します。
手術前の準備
すでに数回の分娩を経験され方や進行流産の方はすでに子宮頚部が開いていますのでほんの少し頸管を開かせるか、もしくはそのままでも手術器具を挿入することができます。
事前の準備がなくても直ぐに手術をすることができます。
分娩を経験したことのない方や子宮頸管がまったく開いていない状態では、事前の準備が必要です。
手術を決定して頸管が開いていないときは子宮の頸管を拡張するための前処置を行います。
膣内を十分に消毒し、子宮頚部をつまんで下に少し引っ張り子宮頚部にラミナリアとかラミセルといって時間が経つと膨張したり子宮頸管が柔らかくなったりするものを挿入します。
マッチ棒の角を丸くしたような太さ、大きさをイメージしてください。
子宮頚管の狭いところに詰め込むように挿入するので痛みを伴います。
流産手術の具体的な方法
ラミセルなどを挿入して数時間経過すると、子宮頸管が広がるので手術器具が子宮内まで挿入することができるようになります。
この準備の後に(数時間後)内診台もしくは手術台に乗り、内診の時のように姿勢をとります。
手術中は看護師さんが最低一名は助手で付き添います。
この後、子宮頸管をもう少し広げる必要があるときは専用の器具をつかって子宮頸管を拡張しますので痛みがあります。
そのため、このあたりから静脈麻酔などで意識や痛みを取り除きます。
もちろん、麻酔中の血圧や呼吸の状態は枕元あたりにいる看護師さんや医師が監視しています。
頸管が十分に拡張したら、ピンセットの先端を大きくした様な器具(胎盤鉗子といいます)で子宮内の組織をつまむようにできるだけ取り出し、その後、取りきれない小さな組織片を耳かきを大きくなった様な器具(キュレット)で掻き出して子宮内をからっぽの状態にします。
摘出した子宮の中の組織は確認のため病理学的検査へ提出されることもありますが、肉眼的に異常がなければ提出されないことも多いです。
(肉眼的には、きちんと絨毛を取り出すことができているか、絨毛に胞状奇胎の疑いはないかなどをチェックします)
手術時間は5〜10分くらいです。
終わりましたよと声をかけられたことも覚えていないかもしれません。
しばらくはベッド上安静を行います。
一般的には2時間くらいすると意識も完全に戻りトイレにも行けるようになります。
日帰り手術を行っているときは数時間、そうでないところは翌日の退院となります。
このとき感染予防の抗生物質、痛み止め、子宮収縮剤などの内服薬が処方されることが一般的です。
一週間後の外来受診で異常がなく、2週間から4週間目くらいで次の月経がくれば今回の妊娠に関しては終了となります。
手術の費用
一連の手術にかかる費用ですが、人工流産(中絶手術)はもちろん健康保険は使えませんので自費診療となります。自費診療なので費用は施設によりかなり違いますが、一般的には10万円以上くらいです。
また比較的大きな公的な病院では人工流産の手術をお断りしているところもありますので事前に確認が必要です。
一方流産手術は流産という診断に対して行われるので健康保険が使えます。
日帰りかどうかでも違いますが数万円ほどになります。
流産手術の危険性
流産手術は数分でおわる非常に短い手術ですが、手術としてのリスクもあります。
以下に書くことは滅多にないことですが、ここで解説しておきます。
妊娠した子宮は通常よりも軟らかく変化しています。
そのため金属製の器具を使用するので子宮に孔が空いてしまう子宮穿孔の可能性が高くなります。
子宮は筋肉なので小さな孔であればそのまま様子を見ることで収縮して自然に閉鎖しますが、大きくなると出血が多くなり開腹して孔を縫合する必要があります。
また、子宮のすぐ上には小腸や大腸がありますが、子宮と貫通して腸管を突き刺すと腹膜炎などが発生するのでやはり開腹手術が必要となります。
”数分でおわる手術である”と術者が気を抜いてしまうことがもっとも危険なことです。
子宮内膜を掻爬(掻き出すこと)しますが、このとき子宮の筋肉の内側を軽く削ることになります。
流産手術を何回も繰り返すと子宮内部が荒れて、癒着を起こすことがあります。
これはアッシャーマン症候群といわれ不妊症の原因となります。
手術の回数が増えるとそれだけ確率は増えると推測されます。
流産手術は幾度と無く見てきましたが、完璧なアッシャーマン症候群の方は一度だけしか見たことがありません。
それだけ珍しいことではあります。
流産手術は必要のある手術でやむを得ません。
しかし、自分の意志で行われる、中絶手術は避妊をすることで防ぐことができます。
中絶手術を何度も繰り返すのは、癒着という観点からすると良いものではありません。
子宮内腔に傷があると妊娠した時に癒着胎盤の可能性もでてきます。
癒着胎盤は非常に沢山の出血を起こしますので事前に情報があると助かります。
私たちが、妊婦さんに以前の流産手術歴などをお聞きするのはそのためでもあります。
流産手術時の麻酔中の管理もとても重要です。
一般的には静脈麻酔を使用して眠っていただくのですが、麻酔が深すぎると呼吸が止まってしまいます。
そのまま数分間放置されると、窒息と同じなので死亡する可能性もあります。
たとえ、一時的に呼吸停止が発生してもしっかりと監視していれば、声をかけて覚醒を促したり、麻酔の効果がなくなってくるまで人口換気をしばらく行うことで十分に対応ができるものです。
これも”数分でおわる手術である”と術者が気を抜いてしまうことが原因となります。


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