妊娠とインフルエンザ
インフルエンザとは?
インフルエンザウイルスが上気道(のどなど)に感染し風邪がひどくなったような症状をおこす感染症です。日本では流行性感冒とも呼ばれていますね。感冒(かぜ)という言葉がはいっていますが、抵抗力がないと重症化し死亡するおそれのある怖い病気です。
スペインかぜやアジアかぜといって世界的にも流行したのもインフルエンザウイルスが原因ですね。
インフルエンザウイルスは種類がA、B、C型の3種類に分けられます。
世界的に流行するのはA、B型ですね。
このウイルスは自分の形を少しずつ変化させる性質があります。
これを抗原変異といい、この性質があるためインフルエンザウイルスは大昔から生き延びているのです。
麻疹や水痘は一度かかると普通は、二度とかからないという特徴があります(終生免疫)。
これは感染した人が抗体を作り、免疫を獲得しているからですね。そのため予防接種を一度か二度受けると感染をほぼ防ぐことができる訳ですね。
抗体があるということは以前感染した記憶の様なものなので次におなじウイルスが侵入してきたときに、血液中の抗体が迅速に対応してウイルスが増殖し悪さをするのを未然に防いでくれるんですね。予防接種を徹底的にすすめれば、ヒトにしか感染しないウイルスは撲滅することが理論的には可能です。
インフルエンザウイルスは抗原変異を少しずつ行い、同じA型でも少しだけ違う抗原性のウイルスに変化します。そのため、前の年に感染したり、前の年に予防接種をしたりして抗体を持っていても型が少し違うのでまた感染してしまうことになります。ウイルスの抗原が少し変化したくらいでは、対応しきれる人もいるので大流行は毎年は起こっていません。
しかし、少しずつの変化が、数十年経過すると突然インフルエンザウイルスもその構造を大きく変えて(車のフルモデルチェンジの様なものですね)全く違う抗原をもったものに生まれ変わります。
そうなるとほとんどの人が抗体を持っていないので全世界で大流行してしまうということになるわけです。
人間にとってはやっかいな性質ですが、こうすることでインフルエンザウイルスは生き残ってゆくことができるわけですね。ウイルスからすると生き残るための、よくできた仕組みですなんです。
インフルエンザワクチンとは?
インフルエンザワクチンはインフルエンザウイルスを薬物で処理して発熱物質などを除去して作られています。これを不活化ワクチンといい、投与されても生ワクチンと違って体内でウイルスが増殖することがありません。
ここは、風疹、麻疹、水痘などの生ワクチンと違う点です。
生ワクチンはウイルスの毒性を弱くして、感染を人工的に起こし体内でウイルスを増殖させて、免疫力を獲得させています。
WHOという団体が世界中から収集したインフルエンザの流行の情報から次のシーズンの流行するタイプを予想しワクチンの型として毎年世界各国にお奨めしています。毎年流行シーズンの終わり頃に、WHOの情報と日本国内の流行状況と併せて次のシーズンの流行するタイプを決めてワクチンを製造し始めます。現在はA型が2種類とB型が1種類を混ぜた3種混合のワクチンとなっているようです。流行を予想してワクチンを作成しますので予想が大きく外れるとワクチンの効果が減ってしまいます。
インフルエンザワクチンの副作用は注射部位の軽い熱感や痛みが10%、発熱などの全身症状が1%くらいにみられ、非常に重篤な副作用はめったにありません。(数百万接種に対して一例などのレベル)
予防注射をすることでおこる不利益(副作用)よりも、利益の方が圧倒的に多いためワクチン接種が推奨されている訳ですね。
ワクチンを接種してすぐに抗体ができるわけではありません。
2〜3週間くらいかかり抗体が増えますので流行期に入る前に接種することが大切ですね。また、抗体の上昇は3ヶ月〜4ヶ月持続するといわれています。
妊娠とインフルエンザ
妊娠中にインフルエンザウイルスに感染すると胎児へ影響があるという報告と、影響はないという報告もあります。今のところはっきりとした影響は不明というところのようです。ただ、先天性風疹症候群のように明らかな異常所見の増加は見られないようです。
妊娠中に感染すると問題となるのは肺炎などの重症化です。
健康な場合はインフルエンザに感染して高熱や関節痛などの症状がでますが、1週間以内くらいで症状が落ち着いてゆきます。感染者が免疫力や体力が低下した状態にあると重症化して小児の場合は脳炎をおこしやすく、成人の場合は肺炎をおこしやすくなります。インフルエンザがはやる時期に高齢者の肺炎死亡率が上昇するのはそのためです。
妊婦さんは基本的に免疫が抑制された状態にあり、肺機能や心機能も妊娠前と違い重症化しやすい傾向があります。
実際に、妊娠中期から後期にかけてインフルエンザに感染すると入院治療が必要となる率が多い場合は5倍くらいになるという報告もあります。
シーズン中のインフルエンザウイルス感染率は成人で10%くらいで、妊婦さんも感染率自体は同じなようです。しかし小さいお子さんのシーズン中のそれは30%と成人よりも高く、またウイルスを排泄する期間も成人よりも長いといわれています。つまり、上のお子さんがいる妊婦さんはインフルエンザウイルスに感染する可能性が高くなるということを示しています。
みなさんもご存じのタミフルという抗インフルエンザ薬は、妊娠中は有益性投与なので、重症化が予想されるときは投与されることがあります。
妊婦さんがインフルエンザウイルスから身を守る方法は、
1.感染者に近寄らない。流行シーズン中は人混みをさける。
2.ワクチンを接種する
感染者が同じ家の中にいると完全に隔離してしまうことは難しいことですね。1週間くらいが感染リスクが高いのでその期間はできるだけ離れて生活し、家の中ではマスクや手洗いは頻繁に行うようにしてください。
インフルエンザワクチンは生ワクチンではないので、理論的には妊婦さんに投与することが可能です。アメリカなどの欧米では妊婦さんは高齢者や免疫不全患者、重症化するおそれのある基礎疾患がある患者などとともに積極的に予防接種を行うべき対象となっています。そのため、ほとんどの産婦人科医がシーズン中のワクチン接種を薦めているようです。
ワクチンを接種することで、絶対に感染を防げるというわけではありませんが、たとえ感染しても軽症ですむ可能性も高く、私たちも積極的にワクチン接種をすることを薦めてきました。
日本では妊娠中のインフルエンザワクチン接種に否定的な意見をもつ医療関係者も多いようです。
そのため、場合によっては接種を希望しても否定されるかもしれませんが、その際にはどのような理由で否定的なのかを聞いてみてください。
授乳中にワクチン接種をすることは問題ないとされています。
お産後は疲れや抵抗力の低下でインフルエンザが重症化する可能性も高いかと思います。
また感染してしまうと授乳中に新生児にうつしてしまうことも十分に考えられますので授乳期にもワクチン接種は薦められています。
ワクチン接種は最終的には受ける人の自由意志できめるものです。
私の情報も含め、いろいろな情報を集めて総合的に判断して接種するかどうかを決めてくださいね。


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