妊娠中の体の変化
妊娠中の身体の変化は赤ちゃんが大きくなって、おなかが出てくるだけではないんです。
胎児の成長を見てみると、もともと0.1mmほどの受精卵が10ヶ月後には身長50センチ、体重3000gくらいになる急激な変化です。
母体には胎児に栄養を供給するための変化やその結果による変化、また分娩に対応する変化など様々な変化が見られます。
妊娠中のほとんどの変化が分娩後に正常化します。
(時に正常化しない方もいらっしゃいますが・・・(^o^))
妊娠中のあらゆる体の変化について見てゆきましょう。
心臓や血管系の変化
心臓は体の隅々まで血液を送るポンプの役目をしています。
心臓から押し出される血液の量を心拍出量といい、妊娠するとこれが著明に増加します。
妊娠していない時と比較して最大30%〜50%増加すると言われています。
(1.3倍から1.5倍ですね)
妊娠6週くらいかは増加し始め、24週くらいで最大となり30週くらいまで持続します。
分娩時にはこれがさらに30%くらい増加します。
分娩後は速やかに減少しますが、完全に正常化するのは産後6週間くらいかかります。
胎児と胎盤を有する子宮が大きくなりより多くの血液量を必要とするために増加すると言われています。
満期になると子宮に流れ込む血液の量は1分間に1リットルにもなり大変な量です。
お産後に出血が多いと数分で数リットル流れ出るのはこんな訳なんですね。
心拍出量の増加に伴って、心臓の収縮回数(心拍数)も増えます。
妊娠すると症状のほとんどない期外収縮も見られるようになり、動悸を訴える場合もありますね。
血液の変化
体を流れている血液の量(循環血液量)はだいたい体重の12分の1リットルです。
(体重60キロの人で5リットルくらい。)
妊娠すると循環血液量も1.5倍くらいに増えます。
しかし、単純に血液の量が1.5倍になっているのではありません。
血液中には水分(血清)と赤血球、白血球、血小板などの細胞(血球)が含まれています。
血清の増加量が血球の増加量よりも多いために実際には薄まりながら血液全体が増加している状態なんです。
お産の時に1リットルくらい出血しても産後けろっとしてる方が多いのも、循環血液量が増加しているためですね。
白血球(細菌やウイルスから身を守ってくれる細胞です)数は平常時は5000〜7000μlですが妊娠中は9000〜12000μLくらいになります。
多いからと言って風邪を引きにくいのではありませんのでお間違えのないように。
分娩前後には20000μLくらいまで上昇することもありますが、その理由ははっきりとわかっていないようです。
生殖器の変化
胎児を宿している子宮の変化は著明です。
妊娠12週頃から本格的に大きくなりおなかがすこし張り出してきます。
子宮は20週では臍の高さまで、36週では肋骨の下あたりに達します。
分娩後は急速な子宮収縮により拳大くらいになります。
外陰部は透明なもしくや白色のおりものが増えるのが一般的です。
かゆみや変なにおいがあればカンジダやその他の細菌感染の可能性もあるので受診が必要です。
乳房の変化
ホルモンの影響で(主にエストロゲン)で授乳のために妊娠中から準備が始まります。
妊娠後半には1.5倍の大きさになりブラジャーもサイズの変更が必要となります。
後期になると初乳の分泌が見られることも多いです。
また、乳房内の乳腺(母乳を作り出す構造)が急速に増えるので乳房痛がでたり、敏感になったりします。
泌尿器系の変化
尿の産生を担うのが泌尿器系です。
腎臓は老廃物などを血液から濾過して尿として捨てています。
腎臓の機能は腎臓に流れ込む血液の量でも決まってきます。
心拍出量などが増える妊娠中は腎臓の機能もupします。
腎臓でできた尿は尿管を通過して膀胱に貯留されますが、この通り道の尿管が大きくなってきた子宮に圧迫されて拡張します。
尿が停滞しやすい状況にあるので、尿路系の感染症や尿管に石(尿管結石)が発生しやすくなります。
妊娠後期に妊婦さんが上を向いてねている時(仰臥位)は大きくなった子宮が下大静脈を圧迫するので足のうっ血を引き起こします。こうなると腎臓に流れ込む血液量が減少して尿の産生が低下します。
横を向いてねている時(側臥位)は下大静脈の圧迫が解除されて尿の産生が増えます。
妊婦さんがねようとするとトイレに行きたくなるのはそんな理由もあるようです。
子宮が大きくなると子宮のすぐ目の前に位置する膀胱は膨らむスペースが減少します。
膀胱が圧迫され、尿が少したまるとトイレに行きたくなります(頻尿)。
※注意※
妊娠後期になると仰臥位でいることがつらくなります。
可能でもできるだけ妊娠後期は仰臥位は避けてください。
大きくなった子宮が自分の下大静脈を圧迫しますが、圧迫が高度となると足からの血液が心臓に戻って行かなくなります。そうなると心臓は空打ち状態となり、血圧が急激に下がり、そのままにしておくと脳に流れる血液の量が減少し、気を失います。
このことを仰臥位低血圧症候群といいます。
母体の低血圧が起こると子宮に流れる血液の量が減少し赤ちゃんもきつくなります。
ねていて、貧血の時のように気が遠くなる感じがあったらすぐに左を下にした側臥位になってくださいね。
呼吸器系の変化
妊娠中のプロゲステロンの働きで血液中の二酸化炭素を少なくするように呼吸がコントロールされるので、妊婦さんは呼吸が早く深くなる傾向があります。
また、妊娠後期では息切れをしやすくなります。
のどの奥や気道の粘膜がむくみやすくなり、妊娠すると鼻が詰まりやすくなったり声の質に変化が見られることもあるようです。
消化器系の変化
胃や腸の変化として有名なのは「つわり」(morning sickness)ですね。
医学的には妊娠悪阻といいます。
つわりは妊娠6週くらいから始まり12〜14週で治まってくることが多いです。
HCGというホルモンの増減と症状の増悪が関係あるようです。
重症化すると全くものを受け付けなくなり点滴や入院が必要となることもあります。
妊娠期間を通じて胸焼けやげっぷが多くなります。
子宮の増大による圧迫や胃の入口のしまりが悪くなり胃酸が逆流するためです。
食事を何回かに分けてとる、枕で頭と肩を高くしてねると少し良いですね。
胸焼けはでてきますが、胃酸の分泌は逆に減少しているので胃潰瘍がある方は症状が軽くなる傾向にあります。
また、プロゲステロンが大量に分泌され、腸の蠕動運動を抑制して便秘傾向になります。
子宮が大きくなり、足の血液が心臓に戻りにくくなることは前述しました。
そのため、妊娠中は痔がひどくなる場合があります。
行き場を失った足の血液が肛門の周囲の血管に流れ込むためです(静脈瘤)。
妊娠中はつらいですが、分娩後にほとんどの人が改善します。
内分泌系の変化
胎盤からいろいろなホルモンが分泌されることが原因です。
甲状腺を刺激するホルモンに似た物質が放出されて、甲状腺を刺激します。
心悸亢進(ドキドキ)、発汗の増加、情緒不安定、甲状腺の腫大(はれ)という甲状腺機能亢進症状がでてくることもあります。
本当の意味での甲状腺機能亢進症は妊婦さんでは滅多に起こらないと言われています。
ホルモンの変化が血糖のコントロールに影響を与えてもともと糖尿病を持っている人は症状が悪化する場合があり注意が必要です。
皮膚の変化
胎盤から放出されるある種のホルモンがメラニン細胞を刺激して皮膚が黒ずんできます。
特に外陰部や乳輪部で多いようです。
また、急激に増大する子宮と副腎から放出されるホルモンのために皮膚の断裂が起きることもしばしば見られます(妊娠線)。
痔が発生する同じ理由で、足の血管がむきむきとしてくることも多いです(下肢静脈瘤)。
非常に痒みを伴ったじんま疹の様なぶつぶつがおなかに出現することもよくあります。
妊娠後期に出てくることが多く、非常に痒いようですが、妊娠が終了すると急に治ります。
骨の変化
増大した子宮を支えるための背骨が前に反り出すので、腰痛がひどくなったりします。
妊娠が終了しないとなかなか改善しない不快な症状のひとつでもあります。


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