分娩と産後|1/2

分娩の概要 1/2

母児にとって分娩は大変な行為なんです

基本的に分娩は自然な営みで医者が関与する必要はありません。
助産院やその気になれば経験者と自宅で出産してもかまわないわけです。 しかしながら、現在ほとんどの出産が病院やクリニックで行われます。 なぜでしょうか?

私は現に出産に立ち会ったり、分娩をとったりしますが、分娩後見直してみれば医学的な行為なにもしなかったということは非常に多いんです(いわゆる助産行為だけですんだ場合ですね)。 分娩は母児の生死をかけた非常にダイナミックな出来事ですが、ほとんどの方は順調に妊娠が経過し、無事に分娩が終了します。

私たち産科医や助産師は小さな異常が危険な状態に発展する前に未然に予想し、対応しています。 もし、医学的な関与が全くなければ出産時の母体の死亡や胎児の死亡などはもっと多くなると予想されます。 何事もなく元気だったお母さんが5分後には急変することだってあるんです。

助産院や自宅出産もよい面はたくさんあり、それを否定するものではありません。
しかし現在、病院やクリニックで分娩される方が非常に多いのは、それらの施設での急変時の対応の早さも理由の一つだと思います。 分娩は非常に危険な行為であるということは是非覚えておいて頂きたい事実です。

大まかな分娩の流れ

妊娠37週を超え、分娩が近づくと血性のおりものが増えてきて、それまで不規則であった子宮収縮が規則正しくなってきます。 10分間隔で規則正しく子宮収縮が発生すると陣痛発来となります。

子宮の入り口は徐々に開いてゆきます。 妊娠初期は鉛筆さえも通過することが出来なかった子宮頚部が最終的には10センチ近い胎児の頭が通過できるくらい開きます。 子宮収縮は10分間間隔から8分、5分、3分などと頻回に収縮が発生するようになります。

数時間から数日かけて子宮の入り口を押し開きながら胎児が子宮から膣を経由して誕生となります。 分娩時間は初産、経産婦、胎児の大きさ、母体の体格や骨盤の大きさ、陣痛の強さなどで大きく違ってきます。 順調に分娩が進まない場合はいわゆる難産といわれ、医学的な介入が必要となることもあります。

誕生すればそれで終わりではありません。 母児間の連絡路である臍帯を切断して母児を分離します。 その後、後産というものがあります。 妊娠期間中に重要な役目を果たした胎盤の娩出をもって分娩が終了します。 分娩後、子宮収縮の程度、出血の程度、参道の損傷の程度などを十分にチェックし必要があれば治療が行われます。 分娩後2時間頃までに子宮からの出血が落ち着いてくれば経過順調となるわけです。

ホテルのドアのたとえ

分娩とは娩出力(胎児を子宮から押し出す力)によって胎児と胎児の付属物が母体外に排出され妊娠が終了することです。 子宮内にいた胎児が子宮外に出てくるにはいわゆる産道を通過します。 胎児は子宮の入り口(子宮頚部)を通過して、膣にいたり膣を通過して膣入口部(外陰部)からでてきます。

この過程は大きなホテルの正面入り口から人が出てくるところと似ています。 大きなホテルは風よけのため自動ドアを2回通過して外に出ることが多いですよね。 胎児も子宮頚部という狭い部分を通過して、膣内にいたり膣入口部(外陰部)という狭い部分を押し広げて出てきます。 似てますよね。

分娩は子宮頚部から母体外の世界までたかだか10センチくらい長さしかない旅ですが、これが大変な旅なのです。 このホテルの正面玄関のたとえは分娩経過を考える上で重要なのでぜひ覚えておいてくださいね。





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