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胎児発育不良

胎児発育不良がなぜ問題となるのか?

基準よりも小さく産まれた赤ちゃんは胎児ジストレス(旧胎児仮死)、低血糖、低カルシウム血症、多血症などになりやすく、周産期死亡率は8倍にもなり、精神発達遅延の発症率も高くなるといわれています。 そこで、子宮内での発育が順調であるかどうかを適切に評価し、発育不良があれば管理する必要があります。

胎児発育不良の診断

基準がややこしいのでゆっくり読んでくださいね。
出生児体重が基準となる発育曲線の10パーセンタイル未満の新生児をLFD児(light for date infant)といいます。 体重だけでなく、身長も10パーセンタイル未満の新生児をSFD児(small for date infant)と区別しています。 ちなみに適正な出生体重の赤ちゃんはAFD児(appropriate for date infant)といいます。

ここでパーセンタイルの説明を。
同じ週数で出生した100人の新生児を体重の軽い方から順番に並べている状況を想像してください。 50パーセンタイルの体重とは小さい方から数えて50番目の体重を表します。 10パーセンタイル未満は小さい方から数えて、9番目までの赤ちゃんのことになります。(未満なので100人の例でいうと10番目の赤ちゃんは入りません) これは標準偏差でいうと大体ー1.2SDに相当します。

出生するとLFD児やSFD児となる可能性のある胎児の状態を子宮内胎児発育遅延(IUGR ; intrauterine growth restriction)といいます。 IUGRは超音波検査で胎児の推定体重を測定し評価します。 推定体重のデータでそれぞれの週数の-1.5SD以上小さいとIUGRと判断されます。 -1.5SDは先ほどのパーセンタイルで表現すると大体7パーセンタイルに相当します。

IUGRと判断される場合はかなり小さい胎児となります。 38週の胎児の推定体重の平均値がだいたい2800gほどです。 あくまでも平均値です。正常と判断される範囲があります。 この週数でIUGRと判定されるのはだいたい2300gよりも小さい場合です。 予想される推定体重よりも少しくらい小さいと結果がでても心配はいらないわけですね。

IUGRも種類があります

胎児の発育の仕方は週数(時期)により違いがあります。
妊娠初期から16週くらいまでは主に細胞の数が増加してゆきます。
また、妊娠33週以後〜出生までは細胞数は増加せずに細胞の大きさが増加してゆきます。
妊娠17週〜32週までは細胞数の増加とともに細胞の大きさも増大します。

染色体異常やトキソプラズマなどの感染症などの胎児自身に異常がある場合は、細胞の数が少ない小さな胎児となります。 妊娠の早い時期に発症し、頭や体が同じように抑制された(発育不良となった)均整のとれたIUGRとなります。 このように初期からIUGRが見られるタイプをsymmetrical IUGRもしくは1型と言います。 これは細胞の形成が少ない胎児になります。 一般的に胎児の予後は不良です。

妊娠中毒症や母体糖尿病などの母体疾患が原因で胎盤の機能が低下したことによるIUGRは、頭の大きさは週数に近い適正な値を示しますが、胴回りが小さい「やせた胎児」となります。 これはbrain sparing effectと呼ばれ、低栄養状態となったときに最も重要な脳をまず大きく育てる一種の防衛反応のような仕組みにより形成されます。 このように胎盤循環不全が原因で妊娠後半でIUGRとなるタイプはasymmetrical IUGRもしくは2型と言います。 頭部と躯幹に均整がとれていない、つまり栄養不足でやせた胎児となります。 この場合は予後が良好なときもあります。 妊娠中期から発症すれば、これらが混合したIUGRとなります。

出生後の予後に関連してきますのでいつからどのくらいの発育障害があるのか?ということが重要になります。

IUGRの原因は?

IUGRとなる原因はいろいろあります。

・胎児側に原因がある場合
・胎盤や臍帯に原因がある場合
・母体側に原因がある場合


胎児側の原因としては、染色体異常、胎児奇形、多胎、薬剤、感染症(風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、パルボウイルスなど)があります。 胎児に原因がある場合は根本的な問題であることが多く、一般的には予後が不良となります。

胎盤や臍帯は母体から胎児に栄養を送る重要な働きをしています。
胎児・胎盤循環障害の原因としては、胎盤機能不全、胎盤形態異常(副胎盤の存在など)、胎盤付着異常、臍帯過捻転、臍帯付着異常、臍帯結節の有無などがあります。

母体合併症があると胎児へうまく栄養を与えることができなくなります。
母体の合併症として妊娠高血圧症候群、糖尿病、心臓病、甲状腺機能亢進症、貧血などがあり、母体への薬物投与、喫煙や飲酒も原因としては重要なものになります。 最近では、妊娠前や妊娠中の過度のカロリー制限(ダイエットなど)が問題となっていますが、この場合は胎児も低栄養となり2型のIUGRの原因となります。 母体の合併症でIUGRの要因となりやすいものは妊娠高血圧症候群(PIH)です。 PIHは胎盤機能不全と密接な関係があります。

原因は一つとは限りませんし、原因不明もよくあります。

IUGRの管理は?

たった一回だけ推定体重が基準よりも下回ってもすぐにIUGRとは判断しません。
その後の発育の推移をしばらく観察する必要があります。 小さいながらも発育が見られる場合や胎児の予備能力がある程度保たれている場合は経過観察で発育を期待します。 その際は、胎児心拍数モニタリングの波形パターンの解析、超音波検査による羊水量や胎児の活動性の評価、胎児臍帯動脈や中大脳動脈の血流測定などで胎児の状態を総合的判断します。

基本的には胎児推定体重で診断され、追跡してゆきますが、誤差の問題はあります。 比較的測定誤差の少ない重要臓器である頭の大きさ、つまり頭囲の発育も重要な判断基準のひとつとなります。

推定体重の増加が2週間くらい停止したり、胎児の予備能力が低下したりしたときは分娩を検討します。 子宮内での発育が期待できなくなってきたと言うことですね。 子宮内環境がよくないのであれば、胎児を出してあげればよい、ということになりますが、胎児を体外環境に出せる週数かどうかが問題となります。 週数が28週未満の場合は現代のNICUの技術を持ってしても後遺症を残す可能性が高くなってくるので、可能な限りの妊娠継続を行うことが目標となります。

IUGRの胎児は潜在的な低酸素状態となっていることも多く通常の分娩のストレスに耐えることが出来ない可能性があります。 基本的には経膣分娩が第一選択となりますが、必要に応じて予定帝王切開術を選択することも多いです。

妊娠中期〜後期にかけてIUGRが発生した場合は母体原因であることが多く、新生児の予後はよい場合も多いです。 この場合に安静やカロリーの高い点滴などが試されます。 しかし、劇的な効果はありません。 胎児原因によるIUGRの場合は根本的な治療が存在しないこともあります。

IUGR管理のポイントは胎児の予備能力が決定的に低下する前に予測し、それまでは慎重な管理行い適切な分娩時期を決定することです。 外来などでも「赤ちゃんが少し小さいようです」と言われたときには基準値内での小ささなのか、そうでないのかを確認する必要がありますね。




 

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