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癌の種類

一口に癌と言っても沢山の種類があり、それぞれに違った特徴があり、治療法や診断方法などは非常に多岐に渡ります。 たとえば、「卵巣癌」と診断された20代の患者さんと50代の患者さんがいると仮定します。 この二人の患者さんの治療方針は違ってきます。

卵巣癌といってもそのタイプ、進行の程度、悪性の度合い、患者さんの年齢や背景などで治療方針がいろいろと違ってくるものです。 最初から手術が選択される場合もありますし、まずは抗ガン剤の治療を行い、その後に手術を行うことだってあります。 入院中の患者さんからは、「同室の卵巣癌の方と治療のやり方やお薬が違うようですね。大丈夫ですか?」と聞かれることもよくあります。 「癌には沢山の種類があり、進行のスピード、構造、悪性の強さ、診断法、治療のやり方などに大きな違いが存在する」という知識はとても重要です。

沢山ある癌の種類をいろいろな観点から分類してみましょう。

・発生する場所による分類
・癌の広がり具合(進行具合)による分類
・癌細胞の構造による分類

発生する場所による分類

これはもっとも一般的な分類の仕方ですね。
どこに癌が発生したのかという観点での分類です。
胃に癌が発生すれば胃癌、肝臓に発生すれば肝臓癌といった具合です。
乳癌、子宮頚癌、卵巣癌、前立腺癌、喉頭癌、皮膚癌、膵臓癌・・・それこそあげればきりがないくらいあります。 体中のいろいろな部分から癌が発生可能性があります。 一般に子宮癌と呼ばれているものは「子宮頚癌」と「子宮体癌」が含まれています。

ちょっと脱線しますが、現代の医学は臓器により専門性が分かれていますので、一般的には癌が発生した場所により担当する科が違ってきます。 胃癌や大腸癌などは消化器系の外科や内科が担当します。 意外と知られていないですが、日本では乳癌は産婦人科はほとんど扱わず胸部外科が担当することが多いですね。 咽頭癌や喉頭癌は耳鼻科が使ったり外科が扱ったりします。 白血病は血液内科、骨肉腫は整形外科といった具合です。

癌の広がり具合(進行具合)による分類

「卵巣癌と乳癌はどちらが悪いのですか?」と質問されてもなかなか返答に困ります。
早い段階で発見された卵巣癌とある程度進行してから発見された乳癌では単純に比較できないからです。

癌が狭い範囲にとどまっていれば治療もしやすいですよね。 そこで、癌の広がりを表す方法が必要となります。 その広がりを表現する方法が進行期という分類です。

進行期は癌の種類により違いがありますが、一般的には1期、2期、3期、4期と数字が大きくなるほど進行していることになります(英語ではstage1などと表記します)。 ステージが低ければ「早期癌」となり、ステージが高くなればなるほどより「進行した癌」ということになります。 また、2a期、2b期、3a期・・・などにさらに細分化されることが一般的です。

子宮頚癌などは1期癌のさらに程度の軽い、「0期癌」という概念もあります。 また1期は1a期と1b期に分かれ、さらにそれぞれが、1a1期と1a2期と1b1期と1b2期に分かれます。 つまり1期だけで4段階に分けられています。 そのため、子宮頚癌でも11段階くらいの程度の差があるわけですね。

ステージは診察や血液検査、内視鏡検査、画像診断、手術時の所見などを集めて総合的に決定されます。 ステージの数字が大きくなるほど、宿主に対する影響が大きくなり、予後5年生存率に違いがでてきます。 「4期の癌は2期の癌よりも予後が悪い」や「5年生存率は3期の癌の方が2期の癌よりも悪い」という表現をします。

癌細胞の構造による分類

卵巣や子宮、肝臓、膵臓、胃などの正常な臓器はそれぞれ意味のある「形」があります。 顕微鏡レベルでそれぞれの臓器はその臓器の働きに適した「構造」を持っています。 胃の表面は食べ物を消化するために必要な腺という構造を持っています。 正確に機能する構造を持つためにはそれを構成している細胞一つ一つが正常な構造である必要がありますね。

核異型や構造異型について

一方、癌を形成している細胞は、顕微鏡でみると正常な細胞とは違った形をしています。 癌細胞は何らかの原因で核内にある遺伝子に異常が生じた状態なので、細胞の核に変化がみられます。 一般的な癌細胞は顕微鏡で観察すると核が大きく、汚い印象を受けます。 これを専門的には「核異型がある」と表現します。

逆に言うと細胞の形態を顕微鏡で観察すると、正常なのか癌細胞なのかを判断することができるということです。 これを利用したのが子宮頚癌のスクリーニング検査、子宮がん検診です。 子宮頚部の細胞を綿棒で採取してきて、顕微鏡で観察して異常な細胞がないかどうかをチェックするわけですね。

癌細胞一個一個が異常なので沢山集まっても正常の構造は作れませんね。 異常な細胞が集まって作り出す構造の異常を「構造異型がある」と表現します。

分化度について

すべて癌が顕微鏡で見ると意味のない構造をしているかというとそうではありません。 もともとは正常な細胞が何らかの理由で変化して癌になりますので、もともとの細胞の性格や特徴をもっていることも多いんです。 癌細胞が全くランダムにぐちゃぐちゃに集まった癌の塊から、非常に正常に近い構造をもち癌かどうかを判断するのが難しい癌の塊までいろいろな程度があるんです。

元々の性格をより保持したまま増殖した癌を高分化癌といい、その逆でぐちゃぐちゃな状態で意味のある構造を持たない癌を未分化癌低分化癌といいます。 この癌の「分化度」が宿主の生命予後に大きく関与してきます。 一般的には、より未分化な構造を持っているものほど予後が悪いということになります。 分化度が低いと、構造的な分類をすることが難しくなります。

より分化した癌はその構造が正常の構造に似てますので名前を付けることが可能です。 扁平上皮といって皮膚の表面などを形作る構造に似ている癌は「扁平上皮癌」といいます。 また液体を分泌する構造を「腺」といいますが(唾液腺、汗腺、アポクリン腺など)腺の構造を持った癌を「腺癌」と読んでいます。

腺の構造と扁平上皮の構造が混在している癌もあります。 癌は遺伝子レベルの異常があるのでどのような構造を持った癌ができてもおかしくはありません。 異常増殖の過程で、腺へ分化してゆくものと、扁平上皮へ分化してゆくものがあるというだけです。 子宮には骨や軟骨の構造はもともとありませんね。 しかし、子宮肉腫の中には軟骨の構造を作ってしまうものもあります。 このように元々その組織には存在していない構造をもった腫瘍を「異所性の腫瘍」とよびます。

いろいろな構造へ分化すること、複数の構造へ分化すること、異所性の構造へ分化すること等は全て、癌という病気が幹細胞の増殖といういわば先祖返りともいえる現象を起こしてるからこそだといえますね。

 

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