不妊症全般
ここでは、不妊症に関して解説してゆきます。
不妊症を理解するためには女性生殖器の構造、ホルモンによる調節の仕組み、妊娠に至る条件などなど沢山のことを学ぶ必要があります。産婦人科領域でも特に奥の深い分野でもあります。
不妊症専門外来を受診すると、沢山の専門用語が出てきますが、不妊症に関して基礎知識があるとその理解がぐっと楽になります。
沢山の知識を身につけていただきたいと思います。
まずは総論的な内容から・・・。
不妊症とは・・・
妊娠を望んで性交渉を2年以上行っても妊娠に恵まれない場合を不妊症といいます。
避妊しなければ90パーセントの方が2年以内に妊娠するというデータがあり、残りの10パーセントの方が不妊症ということになります。
アメリカの場合はこの期間が1年間という定義です。
結婚年齢の高齢化が進んできている昨今は、日本でも1年間をもって定義した方が実情にあっているともいわれています。
これまで一度も妊娠のしたことのない方を原発性不妊症、妊娠を一度でもしたことのある方を続発性不妊症と呼びます。
女性は30歳を越えると妊孕性(妊娠する能力)が低下してくるといわれています。
また、高年齢となってくると妊娠したとしても流産の率も増えてきますが、これは加齢とともに胎児の染色体異常の頻度が増加するためと考えられています。
男性が高齢の場合はどうでしょうか?
卵子と精子の構造的な違いから、男性の場合は加齢の影響をうけても軽度です。
90歳でも児をえたという話もあります。
妊娠成立に大切な条件は沢山ありますが、精子と卵子が出会うタイミングはとても大切ですね。
精子の寿命が、女性の体内では一般的に長くて2〜3日といわれています。
卵子の場合はもっと短く15時間以内くらいともいわれます。
実質的に妊娠可能なタイミングとしては排卵前2日から排卵後1日くらいまでとチャンスはそう多くありません。
排卵後は頸管粘液が急速に減少するので排卵前がタイミングとして最適となります。
基礎体温表をつけて、タイミングを合わせて数ヶ月、夫婦生活を営んでみて、挙児希望があり妊娠成立しない場合には、産婦人科へ相談することになるかと思います。
不妊症治療の流れです。
1産婦人科受診
2問診、診察、各種検査(超音波検査、子宮卵管造影検査、ホルモン)(1〜2ヶ月くらい)
3基礎体温表指導(数ヶ月)
4性交指導などのを含めた一般不妊治療(数ヶ月〜数年)
5難治性不妊の場合は高度生殖医療(体外受精など)
検査や治療がどのように進むかは、患者さんの背景や年齢により違いが出てきます。
妊娠に必要な条件
不妊症のことを理解するためにはどのような条件で妊娠が成立するのかを知る必要があります。
非常に複雑なことがすべてうまく行われて妊娠が成立しています。
「おなかが痛い」という症状の原因はいろいろありますよね。
もうちょう(虫垂炎)、胃潰瘍、腸炎、便秘、卵巣出血、子宮外妊娠、そのほか多数。
「不妊症」といった状態も同じで、沢山の原因があります。
卵管がつまっている、排卵していない、精子の数が少ない、子宮の中にポリープがある、ほか多数。
「不妊症」はひとつの病気ではなく、状態を表現している訳です。
妊娠するために、構造上女性が男性よりも多くの条件がそろう必要があります。
行程が多いので、女性側の原因の頻度は高くなるのは仕方足りませんが、体外受精など高度不妊治療が発達した今は実質的な男性と女性の不妊の原因の割合は50:50ともいわれています。
後でお話ししますが、女性の方が圧倒的に検査項目は多いのに対して男性の検査項目は非常に少ないです。
にもかかわらず、挙児希望の相談にこられるカップルで男性側がなかなか検査を行わない方がかな〜りいらっしゃいます。
挙児希望があり検査を希望する場合は女性だけではなく、男性の検査も同時に行わないと意味がありません。
男性の方々、是非泌尿器科で検査を受けて下さい。
妊娠成立の条件です。
男性側;精子の提供
1十分な量の精子の膣内への射精
2子宮頸管から子宮腔内への精子の進入
3子宮内宮から卵管内での精子の移動と膨大部への到達
女性側;卵子の提供
1卵巣内での卵胞の発育
2排卵と黄体形成
3卵管采による卵子の補足と卵管内での移送
受精から着床まで
1精子の卵子内への進入(受精)
2受精卵の分割(胚の形成)
3胚の子宮内への移送
4子宮内膜の着床のための変化
5胚の子宮内膜への着床
これらの条件が満たされずにどこか一カ所でも異常があると妊娠成立しない、ということになるわけです。これが不妊の原因となります。
十分な量の正常な精子が膣内に射精されない。
精子が子宮内から卵管を移動できない。
卵胞が発育しない。
排卵しない。
黄体が形成されない。
卵子が卵管に取り込まれない(pick upがうまくいかない)
卵子と精子がうまく受精できない。
胚が正常に分割できない。
受精卵が卵管を移送されない。
着床がうまくいかない。
大まかには、排卵因子:卵管因子:男性因子がそれぞれ同じくらいの頻度です。
様々な検査を行っても、不妊原因が特定できないものを原因不明不妊もしくは機能性不妊と呼んでます。
これは黄体化未破裂卵胞や卵管采の卵子の補足能力の低下などが含まれているようです。


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