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<産婦人科の基礎知識/不妊症や妊娠のお勉強

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不妊症治療総論

不妊症の原因が沢山あるとそれに対する治療法も当然多くなります。
また、治療はいわゆるスタンダードな方法から、経験から導き出された主治医独自の治療まで内容も多彩です。 不妊治療の対象となる方の年齢や背景も違ってきますので、治療の進め方に幅があって当然ですね。

不妊症は段階を踏んで治療を行われることが一般的ですが、ステップアップの期間や方法も患者さんの状況や医師の考え方で違ってきます。 そのため、ここで説明している治療は、現時点(2007年)で一般的だと思われる方法をピックアップしてあります。 そのあたりを考慮して読んでください。

不妊治療の原則は「できる限り自然な方法で」が原則です。
時間的な余裕があるにもかかわらず、原因の検索をろくにせずいきなり体外受精に移行するのはどうかとおもいます。 現時点で生殖補助技術で次世代に何らかの影響を与える可能性はないだろうとなっていますが、やはりできるだけ自然に近い方法で行うべきだと考えます。

そうは言っても、高齢の方で時間的に余裕がない場合に漫然と同じ治療を繰り返したりすることは、時間の損失になります。 そのような場合は、素早いステップアップなど個別の判断が重要になります。

不妊治療には産婦人科の知識が総動員されます。
そのため、医学的な用語が沢山出てきて、素人の方は医師などから説明を受けてもさっぱりわからないということもあり得る話です。 不妊治療を受ける際は、自分がどのような状態でどのような治療を受ける必要があるのかを知っておくと理解が深まります。 そのためには少しでも多くの情報を手にしておく必要がありますね。 これから不妊症治療のことについて解説しますが、できるだけわかりやすく書いて行きますのでしっかり勉強していってくださいね。

不妊症治療のながれ

挙児希望のある方が受診されて、まずはカウンセリング・問診を行います。
患者さんの年齢、職業、結婚歴、離婚歴、他科疾患の既往歴、内服歴、妊娠歴、流産歴、手術歴、不妊歴や治療歴、感染症の既往歴・・・などの質問もいたします。 また、妊娠や今後の不妊治療に対する考え方もお聞きするかと思います。 医療の分野は診察以前に問診が大切です。この段階から治療が始まっています。

初めての方は、「どうしてここまで聞かれるの!」と思われるかもしれませんが詳細な問診は後の検査や治療に非常に役に立つものなんです。 身内とはいえ話をしてはいけないという守秘義務がありますので安心してお話をしてください。 隠したいことが非常に重要なことだったりもします。(これは不妊治療に限ったことではないんですが・・・)

一通りの問診の後、今後の検査のプランニングが説明されます。
スクリーニング検査として一般不妊症検査を行います。 検査はたくさんありますが、無駄な検査はなく最低限必要な検査なのでぜひ受けて下さい。 特にフーナーテストと精液検査は男性側の意向でなかなか受けられないことも多いです。

一般不妊症検査で異常が見つかれば、まずそれに対する精密検査 (二次検査)個別の治療(子宮筋腫や内膜症の治療)が行われます。 このとき、原因によってはすぐにでも体外受精等の高度生殖医療が必要となることもあります (無精子症や両側卵管の完全閉塞など)。

一般不妊症検査で異常が見つからなければ、タイミング療法を行いつつ、必要に応じて精密検査を行います。 ある程度の期間タイミング療法を行い妊娠に至らなければ、この段階で腹腔鏡検査がおこなわれることも多いです。 施設によっては腹腔鏡を早い段階で行うところもあります。

その後、排卵誘発剤を使用した治療や人工授精が行われます。
この段階で妊娠される方もたくさんいらっしゃいますので安易な高度生殖医療へのステップアップは行われるべきではないと思います。 もちろん、時間的な余裕や背景により左右されますが。

それでも妊娠が成立しない場合は、最終的な手段として体外受精や顕微受精などの高度生殖医療ないし補助生殖医療(Assisted Reproductive Technology:ART)が行われます。

不妊治療の考え方

不妊治療は色々な方法があります。
排卵誘発剤の使用や子宮内膜症の治療、タイミング療法、人工授精、体外受精などなど・・・。 ごちゃごちゃして難しく見えますが、整理してみるとそう難しい内容ではありません。

不妊症治療はまず、一般不妊症治療生殖補助医療(ART)に分けられます。
次に一般不妊治療は排卵誘発剤を使用するか否か人工授精を行うか否かで分けられます。
実はこれだけなんです。

一般不妊症治療が不妊症の原因探究とその改善から始まり、受精のタイミングを合わせる巨視的な(マクロな)治療であるのに対して、ARTは最先端の技術を使用し、精子、卵子、受精卵、胚などを顕微鏡下に扱う微視的な(ミクロな)治療になります。 一般不妊治療は精子と卵子が出逢いの場を間接的に準備してあげる治療で、ARTは出逢いの場を直接準備してあげる治療とも言い換えられますね。 実は ARTは原因そのものの治療は行われいないんですね。

一般不妊症治療

一般不妊症治療は原因に対する治療受精の確率を上げる治療に分けられます。
不妊症の原因が判明した場合はそれに対する治療がまず優先されます。

原因に対する治療

不妊症の原因として明らかなものがあればそれに対して治療が行われます。
・排卵障害に対して排卵誘発剤投与
・黄体機能不全に対して黄体ホルモンの補充や排卵誘発剤の投与
・卵管因子の改善のために腹腔鏡下手術や子宮卵管造影など
・子宮筋腫に対する筋腫核出術
・粘膜下ポリープに対する子宮鏡下手術
・子宮内膜症に対する治療
・感染症に対する治療
・子宮奇形に対する手術療法

また、子宮奇形や子宮筋腫などは必ずしも治療を行うとは限りません。
これらの存在下でも妊娠する場合は十分にありますから、不妊の原因となっているかどうかは状況によります。 しかしながら、明らかな原因と考えられる場合は、迅速な対応が必要となります。

受精の確率を上げる治療

自然排卵か排卵誘発剤を使用するのか、自然性交か人工授精か4つに分けられます。

一般不妊治療は前述しましたが、精子と卵子の偶然の出逢いの確率を上げるのが目的です。 卵子も精子も寿命が1週間ずつあればもっと簡単に妊娠が成立すると思いますが・・・(精子の寿命は2〜3日くらいと短いものです) そのため、出逢いの確率を上げるために、排卵の時期の正確な予想と精子の量の維持が大切になります。

排卵の時期の正確な予想のために、基礎体温を利用したり、排卵誘発剤を使用したり、超音波検査を行ったりします。 また、精子量の維持のために禁欲期間を指導したり、必要に応じて人工授精を行ったりもします。 さらに、受精後の着床環境を整える意味で黄体ホルモンを補充したり、卵巣を賦活させる薬剤を使用したりもします。

→排卵誘発法(controlled ovarian hyperstimulation:COH)を使用する

飲み薬のもの(クロミッド療法など)と注射のもの(hMG-hCG療法)があります。
これらは卵巣を間接的もしくや直接的に刺激して排卵を促進させるもので、無排卵の場合が良い適応となります。 しかし、排卵が正常な場合でもCOHを行うこともあります。 COHで正確な排卵の時期をつかむために、また後の黄体機能不全の改善目的などの時ですね。 排卵があるのにCOHを行うのはちゃんと意味があるんですね。

→人工授精(intrauterine insemination:IUI)を行う

マスターベーションなどで採取した精子を人工的に子宮の中に注入する行為です。
精液検査で以上が出た場合や、頚管因子による不妊、(フーナーテスト不良例や抗精子抗体陽性例など)、勃起不全とはじめとする性交障害などが適応となります。 諸検査で異常が無くても自然性交のタイミング法を一定の期間続けても妊娠が成立しない場合はAIHへステップアップすることもあります。

IUIは一般的にはAIHといわれています。
配偶者間人工授精=AIH:Artificial Insemination with Husband's semen、これは夫の精子を人工的に子宮内に注入することですね。
欧米などでは行われていますが、非配偶者間人工授精=AID:Artificial Insemination with Donor's semenといって、夫以外の精子を人工的に子宮内に注入することもあります。

AIHも長くやればやるほど妊娠率が上がるわけではありません。
もちろん10回目で妊娠成立ということもありますが、統計的には6ヶ月くらいまでで頭打ちがくるようです。 AIHも6ヶ月〜1年くらい行っても妊娠に恵まれない場合は、十分な相談を行い、さらに上の段階であるARTに進むことがあります。

Assisted Reproductive Technology(ART)

生殖補助医療や補助生殖医療と訳されて、その技術を使用した不妊治療を高度生殖医療といいます
(ARTはまさに"art"ですね)。
卵子や精子や胚を顕微鏡下に扱う不妊治療ですね。
体外受精-胚移植、配偶子卵管内移植、接合子卵管内移植、顕微授精、胚の凍結保存などが含まれます。 最近はARTを有する施設が増えてきたとはいえ、どこの病院でもできるものではありません。 高度生殖医療といわれるだけあって、専門の知識、設備、スタッフが必要になってきます。

一般的な体外受精

ARTの中でもっともメジャーな技術が体外受精-胚移植(in vitro fertilization and embryonal transfer:IVF-ET)ですね。
in vitroとは「ガラス器内で」と言う意味で、ちなみにin vivoは「生体内で」という意味です。

成熟卵胞を経膣超音波で見ながら針で突き刺して卵胞液も含めて多数の卵子を採取します。 培養液中で精子と混ぜ合わせ、受精を確認して培養を継続し、分割卵(胚)を子宮内に移植する方法です。

体外受精以外に妊娠の見込みがない場合のみに使用される技術で、
・卵管の障害による不妊症
・精子の数が非常に少ない場合や運動率が非常に低い場合
・免疫性の不妊症
・子宮内膜症などの腹膜因子による不妊症
・原因不明の不妊症
などが対象となります。

GIFTとZIFT

より自然な妊娠課程を模倣しようという試みから行われたのが配偶子卵管内移植(GIFT)や接合子卵管内移植(ZIFT)です。
これらは卵子と精子を人工的に採取することはIVF-ETと同じですが、戻す場所が卵管内である点が違います。前者は卵子と精子を採取したらすぐに卵管内に戻す方法で、後者は体外で受精を確認してから卵管に戻す方法ですね。 ※GIFT:gamete intrafallopian transfer、ZIFT:zygote intrafallopian transfer

卵管に戻す際に腹腔鏡が必要となり、また全身麻酔も必要となるなどIVF-ETよりも煩雑であるため最近ではこの方法を行っているところが減少傾向にあります。 ただ、IVF-ETよりも妊娠率が高いと言われています。 これは、受精卵は卵管内で自然に分割する方がより自然であると推測されています。 しかし、この方法は卵管の機能が正常でなければ実施できないという制約もあります。

顕微授精

IVF-ETの受精の段階をもっと直接的に関与するのが顕微授精(microfertilization)です。
究極の授精方法でいくつかの方法がありますが、代表的なのが卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection;ICSI)(イクシーと呼ばれます)です。

非常に小さい注射針を作成して精子一個を吸引し、卵子の細胞質の中に直接注入する方法です。 理論的には精子一個でもあれば可能な技術で、重症の男性不妊症(精子がほとんど存在しない場合)や免疫学的不妊症などが対象となります。

顕微授精のさらに究極的な方法が、MESA-ICSIやTESA-ICSIです。
男性の精巣や精巣上体に存在する精子を外科的に採取してきて顕微授精を行うものです。 以前は夫ではない他人の精子を利用したAIDでしか妊娠が不可能とされてきた男性不妊症の場合も妊娠が可能となってきたわけです。

胚凍結保存や凍結胚移植

少しこれまでのカテゴリーとは違いますが、重要なものが胚凍結保存や凍結胚移植ですね。
前者は、IVF-ETの際に余った胚を捨てずに超低温環境で凍結して保存する技術で、妊娠が成立しなかった際は凍結しておいた胚を解凍して移植するのが後者ですね。 受精して分割がはじまった胚の時間を止めて保存するわけですね。これはすごい技術です!

目的は余った胚(余剰胚)の有効活用、OHSSの予防、多胎妊娠の防止、患者負担の軽減などですね。 理論的に半永久的に保存が可能で、何年経っていても解凍してまた細胞分裂を再開させることができるわけです。(もちろん、復活できない胚(loss)もあります。)

孵化促進法(assisted hatching:AHA)

受精卵がより分割した段階で移植する胚盤胞移植や胚移植の着床率を向上させる目的で孵化促進法(assisted hatching:AHA)という技術もあります。 AHAは、一卵性双胎(いろいろなリスクが高くなる双胎)の発生率が上昇するともいわれています。

ARTの成績

平成15年末での、日本産科婦人科学会の報告をいくつかご紹介します。全国平均と考えられます。
ARTの登録施設は全国で590施設で、平成15年にARTで出生した赤ちゃんは17400人でした。
最近の年間総出生数の1%くらいはARTによる出生となりますね。
これまでの日本の累計出生児数は117589人と11万人を越えていました。

新鮮胚を使用したIVF-ETでの妊娠率は移植あたり29.8%で、そのうちの流産率が22.4%という成績でした。 前は妊娠率が25%くらいだったので成績は上がってきてますね。 一般の流産率が15%くらいなので流産率はやや高いことになりますが、これは対象者の元々の素因も関与しており(年齢などの因子)一概に比較はできません。




 

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