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<産婦人科の基礎知識/不妊症や妊娠のお勉強

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排卵方法

IVF-ETの適応となったら、十分な説明を受けるか、セミナーなどお集団説明会を受け治療開始となります。
一般的に自然に行われている行為を人工的に行うのでたくさんのステップがあります。

妊娠成立までは以下のような経過となります。

1.排卵誘発、卵胞のチェック、hCG投与
2.採卵
3.採精子
4.媒精(ICSI)
5.受精卵培養
6.胚移植
7.黄体管理
8.妊娠判定

それぞれについて詳しく書いてみます。

排卵の方法について

さあ、スタートです!
妊娠成立のためにはまず卵子と精子を準備してあげる必要がありますね。
精子は簡単に体外に取り出すことができますが、経膣超音波以前は卵子を体外に出すのは簡単ではありませんでした。今は経膣超音波の発達で卵胞の大きさの確認と採卵が容易になっています。排卵誘発剤や培養液などいろいろな面でIVF-ETは進歩してきましたが、その中でも経膣超音波の発達は貢献度が高いんですね。

卵子は未熟な段階で採取してもその後の受精や卵割がうまくいきませんので卵胞の発育を十分に確認して採卵する必要があります。IVF-ETにおいて、採卵に至る前の卵胞の発育の段階は大きく分けて二つあります。
薬剤を使用しない自然排卵から採卵する方法排卵誘発剤を使用する調節卵巣刺激法です。
(後者は使用する薬剤によって沢山の方法があります)
IVF-ETで一般的なのは排卵誘発剤を使用して多数の卵子を採取する後者の方法です。
現在のIVF-ETの8割以上はこの方法で採卵が行われています。

自然な排卵周期では通常は1個の卵胞が発育して1個の卵子が排卵します。そのため、自然周期による採卵では1個の卵子しか採取できませんが、クロミフェンによる排卵だと1〜3個、hMGによる排卵だと3〜20個くらいの卵子を採取することができます。採卵した卵子がすべて受精するわけではないので数が多いとそれだけ妊娠の確率も上昇するというわけですね。

これまで、薬剤を使用して卵巣を刺激して発育する卵胞の数を増やす方法はcontrolled ovarian hyperstimulation(COH)と呼ばれてきました。これは調節卵巣”過剰”刺激法と訳され、強力な刺激を与えて排卵を行うものです。そのため、副作用もいろいろとみられます。

最近はできるだけ患者さんに対して、侵襲や副作用、経済的負担が少ない方法が試されるようにもなってきました。卵巣が正常反応を示す患者さん(normal responder)に対しては必要最小限の卵巣刺激を行いOHSSや多胎妊娠などの副作用を軽減もしくはなくすことが可能となります。そのような動きもあり、薬剤による卵巣刺激法のことをcontrolled ovarian stimulation(COS)、「調節卵巣刺激法」と呼ぶことが一般的となってきているようです。 できるだけ自然に近い方法をによるIVF-ETをfriendly ART(優しいIVF-ET)とも呼ばれます。

まずは、現時点では主流である、IVF-ETで一般的なCOSについてお話いたします。

一般的なCOSについて

IVF-ETの際のCOSは沢山の種類がありますが、そのほとんどはhMG製剤とGn-RH アゴニストを使用したものです(全体の80%以上がこの方法です)。hMG製剤はいくつかの種類があり、使用する薬剤の種類や投与期間などの投与方法は施設により違いがみられます。また施設間の違いだけでなく、患者さんの年齢や背景、不妊症の原因、刺激に対する反応性などでも変化してきます。

自然排卵は一つの卵子が排卵しますが(時に2個になり二卵性双胎となることも)、一つの卵子のために数十個の卵子が閉鎖した卵胞とともに消失しています。排卵前に閉鎖してしまう運命にある卵胞を強制的に発育させ多数の卵胞を成熟させ、採卵に持ってゆくのがhMG製剤を使用したCOSの原理です。

Gn-RH アゴニスト(スプレキュアなど)

ちょっと工夫をしないと採卵の前に困ったことが起きます。
hMG製剤で卵巣を刺激し、多数の卵胞が発育してくると卵胞内のエストロゲンの合計が急激に増加します。このエストロゲンの増加により、排卵の引き金となるLHサージが予想よりも早く起きてしまいます(体がエストロゲンの上昇を正式な排卵の時期と勘違いする訳ですね)。
すると採卵前に採卵すべき卵子がなくなってしまいます。これでは、IVF-ETできませんので、それを予防するために使用されるのがGn-RHアゴニストです。
商品名はナサニール(一日2回噴霧)もしくはスプレキュア(一日3回噴霧)で鼻腔内噴霧薬(鼻にしゅっ、しゅっとやるタイプのもの)です。

わかりやすくするためGn-RHアゴニストの一つであるスプレキュアで説明します。
視床下部から放出されるGn-RHというホルモンが脳下垂体に到達しGn-RHレセプターという部分にくっつき、脳下垂体からFSHやLHが放出されます。FSHやLHが卵巣に作用して卵胞の発育、排卵をコントロールしています。

スプレキュア(Gn-RH作動薬)は脳下垂体のGn-RHレセプターに素早くくっつきます。スプレキュアを毎日鼻にしゅっしゅっとやると投与開始時は一時的にFSHやLHの分泌が上昇します(flare up現象)。そのまま毎日投与すると慢性的な刺激で、レセプターの数が減少してきます。この現象をdown regulationといいます。そうなるとレセプターの数が減るので正常のFSHやLHの分泌が急速に減少します。

こうなるとエストロゲンがどんなに増えてもLHが分泌されず結果的に予期せぬ排卵を予防することができます。排卵させたいときにhCG製剤を注射などで投与すれば計画的に排卵を起こすことができるというわけです。

スプレキュアの投与方法は2種類あります。
前周期の高温相中期からスプレキュアを点鼻投与するlong protocolと投与初期のflare up現象を利用して行うshort protocolがあります。前者が圧倒的に多く使用されています。

スプレキュアによるlong protocol

前周期高温相の中期からスプレキュアを点鼻投与し、血中のエストロゲン値を測定し先のdown regulationを確認して、月経開始の3日目くらいからhMG製剤を7〜10日間筋肉注射または皮下注射します。経膣超音波で卵胞の発育をみて16〜18mmくらいの卵胞が得られたらhCGを5000〜10000単位投与しその34〜35時間後に採卵を行います。タイミングが遅れると排卵してしまうのでhCG投与と採卵の時間は厳密に決められます。

卵巣の予備能力の低下した高齢不妊の方やpoor responderの方はスプレキュアの使用でより反応不良となることがあるので場合によってはhMG-hCG単独でCOSを行うこともあります。

セトロタイドについて

スプレキュアの正体はGn-RH作動薬で間接的にFSHやLHの分泌を抑制しています。ダイレクトにFSHやLHの分泌を押さえるのはGn-RH拮抗薬(Gn-RHアンタゴニスト)です。最初に開発されたのが作動薬なのでこれまではこのお薬しか存在しませんでした。しかし、今は拮抗薬(セトロタイド)が開発され世界中で使用されています。日本でもようやく認可が下り2006年9月から販売が開始されています。

セトロタイドは投与開始直後からLHの分泌を抑制するのでスプレキュアのように長期間投与する必要がありません。そのためhMG製剤の使用量も減り副作用や経済的負担の軽減にもなります。
今後は主流となっていくと思われます。

friendlyなCOSについて

normal responderの患者さんにはできるだけソフトな卵巣刺激をということでクロミフェン(CC)を使用した方法や自然排卵を利用した採卵法も行われるようになってきました。

CCを利用した方法

CCをCOSに利用すると、hMG製剤によるOHSS、多胎などを予防し、患者さんの身体的、経済的な負担を軽減させることができます。 月経開始または薬剤による消退出血かの3〜5日目から一日50〜100mgを5日間内服します。月経周期10日ころに卵胞の発育状態を観察し、時にはhMGを数回追加投与しさらに卵胞を発育させることがあります。主席卵胞の大きさが18mm以上あればhCG5000〜10000IU投与しLHサージを起こし34〜35時間後くらいに採卵します。

自然周期による採卵

約30年前の体外受精が始まったばかりのころは自然周期による採卵を行い体外受精が行われていました(この方法しかありませんでした)。もちろん当時はいろいろな技術的な未熟さから成績は良いものではありませんでした。その後COSの手法や薬剤、検査機器や培養液の進歩で妊娠率が上昇してきました。自然周期による採卵自体は最初から行われていた方法ですが、卵子の成熟度や良い、患者さんの経済的利点が大きい、OHSSや双胎など発生を予防できるなど利点も多く見直されてきた方法でもあります。

もちろん誰にでも行うことができるものではなく、排卵が規則正しく行われていることが大前提となります。欠点は一個の卵子を排卵前に採取しIVF-ETに使用するため、採卵時期を逃し、採卵率が低下することがあげられます。また卵子が一個しかないので受精するか、しないかのどちらかになってしまいます。しかし、自然周期なので成功しなければ次の月に続けてチャレンジすることも可能となります。

血中エストロゲン(E2)やLH値測定ができることで採卵の時期をより正確に決定できます。月経周期10日目以降に卵胞径が15mmくらいとなったらE2やLHの測定を開始し、LHサージを捕まえて採卵を行います。より頻回で厳密な卵胞測定が必要となります。

現時点では多数の卵子を採取してIVF-ETする方法の方が妊娠率などの成績は良いようです。ただ、Friendlyな不妊治療を積極的に行うクリニックや病院も出てきているので今後の成績向上に注目したいものですね。


 

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