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<産婦人科の基礎知識/不妊症や妊娠のお勉強

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体外受精の現状(統計的なお話)

ここでは、2007年時点での体外受精の現状などについて解説します。

IVF-ETとICSIについて

一般的なIVF-ETにおいて受精は自然任せですが、ICSIは人工的に卵子の細胞質内に精子を注入することで授精を促します。厳密にはICSIはIVF-ETに含まれる技術ですが便宜上一般的な体外受精をIVF-ETと表現し、顕微授精をICSIと標記します。
IVF-ETとICSIは受精の段階が根本的に違いますが、そこだけの違いなので患者さん側が受ける診察や排卵誘発剤投与、胚移植などの処置に違いはありません。説明もなくICSIが行われることは絶対にありませんが、もし患者さんに何も告げないで胚移植を行ったと仮定すると、一般的なIVF-ETなのかICSIなのかは患者さんは区別がつかないものです。

順番としてはIVF-ETを行い、受精障害などがあればICSIに移行して行きますが、精液検査で受精可能な精子の絶対的な不足(総数や奇形率や運動率)があれば最初からICSIを行う必要があります。

日本におけるARTの統計とは?

毎年、日本産科婦人科学会が全国のARTを行っている施設から情報を集めて統計を出しています。
まとめる時間がかかるので大体2年くらい前のデータになりますが、全国平均と考えられるとても貴重なデータです。

このデータではARTを
 1.新鮮胚を用いたIVF-ET
 2.新鮮胚を用いたICSI
 3.凍結融解胚移植
の3つに分けて集計してあります。

最新のデータである平成15年1月1日〜12月31日までの報告をご紹介します(全国でARTを行える施設は590あります。この数は急速に増えてきています)

ARTによる治療がどのくらい行われているの?

一年間にARTによる治療が行われた周期(1人で複数回受けているので何周期という表現を使います)

 新鮮胚を用いたIVF-ETが38575周期
 新鮮胚を用いたICSIが38871周期
 凍結融解胚移植が24459周期

合計101905周期となります。
年間十万周期以上の治療が行われています。
なんと、この年からICSIがIVF-ETを抜いてしまいました!
いかにICSIが増えてきたかをあらわすデータです。

どのくらいの赤ちゃんが誕生しているの?

ARTによる年間出生児数は17400人、統計を取り始めて累計出生数が117589人にもなりました。
年間120万人くらい出生しているので全出生の1%を越えてきています。

気になるARTの成績は?

1.新鮮胚を用いたIVF-ET 
 採卵率94.6%、移植あたりの妊娠率29.5%、妊娠あたりの流産率22.4%、移植あたりの生産率19.6%

2.新鮮胚を用いたICSI
 採卵率94.3%、移植あたりの妊娠率26.9%、妊娠あたりの流産率22.4%、移植あたりの生産率18.0%

3.凍結融解胚移植
 採卵率は無意味、移植あたりの妊娠率31.6%、妊娠あたりの流産率22.6%、移植あたりの生産率21.4%

凍結融解胚移植が若干成績が良いですが、この理由は不明です。
ただ、全体的に毎年妊娠率が上昇しているのは事実です。流産率はやや減少傾向にあります。
これらのデータはアメリカのものと比較するとまだまだ及びません。
生産率は無事出生する率のことですが、大体移植の5分の1くらいというデータになります。 これらのデータは全国平均であり、個々の施設のデータは直接問い合わせるか、施設のHPで公表されたものを調べる必要があります。施設間の成績もいろいろです。

ここで注意していただきたいのは単に妊娠率の高さや流産率の低さだけでは評価できないという点です。高齢の方が多い施設や多胎防止のために胚移植を一個しか行っていないポリシーの施設などは成績が悪く出てしまう可能性があります。単に結果だけではなく背景も考慮に入れてデータをみる必要があります。

日本の統計では年齢などの項目は含まれていませんのでアメリカのデータをいくつか紹介したいと思います。
何歳くらいの女性がARTを受けているの?
もっとも多いのは30歳代で、20歳代や40歳大は少数になります。

年齢によりARTの成績に違いがあるの?

年齢のことはあまり語られたくないことですが、現状の把握という意味で大切なことなので書いてみます。
卵子の成熟の仕組みで書きましたが、女性の年齢は妊娠率や生産率に影響を及ぼす最大の要因になります。20歳代では妊娠率や生産率は高く安定していますが、35歳を過ぎたあたりから低下し40歳以上では急速に低下してゆきます。不妊治 療において、30歳代なかばというのがひとつの区切りとなっているのもそんなわけです。また妊娠しても加齢ともに流産率も上昇してゆきます。それまで約15%くらいとほぼ一定であった流産率が、35歳ころからぐぐっと上昇し始めます。40歳で30%、43歳で50%、45歳になると70%くらいが流産という結果になります。

アメリカでは若い女性から提供された卵子を用いた提供卵によるARTが行われていますが、この成績を見ますと、驚くことに35歳、40歳、45歳と年齢が違っても20歳代と同じくらいの妊娠率、生産率、流産率が得られています。加齢に伴うARTの成績の低下は子宮やホルモン環境ではなく、卵に原因があるということ示しています。ARTの技術が進歩してきて妊娠率などの成績は40歳までならじわじわと上昇して来ているのですが、42歳以上となるとARTをもってしても、その成績に変化はありません。加齢による卵子の状態は現時点での技術でも改善が難しいということを示唆しています・・・。

 

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